一方向結合システムに生じる不安定化現象は、パイプの中を流れる液体に生じる乱流などの物理現象と非常に似通っているため、双方の現象とも同じメカニズムを有していると推測されている。本研究の目的は一方向結合システムの不安定化現象のメカニズムを理論的に解明し、その抑制法を提案することである。本研究の実績は以下の通りであり、全て学術論文として国際的なジャーナルに出版されている。 (1)一方向結合Lorenzシステム: このシステムに不安定化現象が生じることを理論的・数値的に確かめ、さらに遅延時間制御法でその抑制が可能であることを確認した。この理論的解析にはH無限大ノルムを用いている。 (2)一方向CML・Chua回路: 一方向CMLと一方向Chua回路を電子回路で実装し、これらのシステムに生じる不安定現象を実験的に観測した。また、遅延時間制御による抑制効果も実験的に確認した。これらの実験結果は、本研究の一連の解析的結果を実証するものである。 (3)一方向結合システムを双方型(環状型一方向結合システム)に拡張し、遅延時間結合に伴うAmplitude Death現象との関連を理論的に示した。その結果、各システムが奇数条件を満足している場合、Amplitude Death現象は生じないことが明らかになった。
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