本研究の目的の一つである大型無人ヘリコプタの高精度モデリング手法の確立にあたり、既に構築済みの実ヘリコプタを用いてシステム同定実験をおこなった。えられた実データに対してデシメーションを施し、アドバンストシステム同定法を適用することにより、ヘリコプタは剛体モードが支配的であること、また、大きな加速度運動を伴わない範囲でのプログラム飛行が可能であることが確認できた。 このプログラム飛行にあたっては、ヘリコプタの高精度な位置・速度情報が必要であるということから、GPS(全地球測位システム)とINS(慣性航法システム)を用いたカルマンフィルタリングに基づく、ハイブリッド航法システムの開発をおこなった。これにより、サンプリング周期の異なるセンサ情報のフユージョンが可能となり、小さいサンプリング周期での高精度な推定が可能となった。また、提案した手法においては、先に導出した同定モデルのダイナミクスも推定誤差の補正に用いるため、別の見知から見た場合には、異常検出さらには故障診断へも応用可能と思われる。 本研究のもう一つの目的である飛行制御系の設計においては、同定モデルと実システムのモデル化誤差を考慮可能なロバストコントローラの設計し飛行実験をおこなった。同時に、素早い運動を伴う実飛行時の制御入力飽和を考慮した、ゲンスケジュールド制御系設計法を提案した。本手法では、制御入力が飽和しても、ロバスト安定で、かつ特性劣化の少ない制御系設計が可能となることを示した。 本研究にてえられた成果は、学会誌論文(3件)、国際会議(1件)、国内会議(3件)で発表された。
|