研究概要 |
本年度,土木学会コンクリート標準示方書の改訂が5年ぶりに行われた.仕様規定型から性能照査型へと設計基準の転換がさらに進められ,設計構造物の耐久性能に関する項目が詳細かつ多様化していることがその改定の大きな特徴のひとつであるといえよう. 新示方書では,コンクリート構造物の耐久性や機能性に対して大きな影響を及ぼしている物質の移動速度に関連するパラメータに対し,コンクリート躯体に発生する(と予測される)ひび割れの影響を考慮することとなっている.より安全かつ経済的な構造設計を行うためには,コンクリートの劣化原因と密接に関連している物質の移動現象を明らかにする必要があり,特にひび割れの有無による影響をより深く解明することが重要である事は,新示方書の改定内容を見ることからも明らかである. 本研究では,コンクリートの物質移動に特に大きな影響を及ぼしていると思われる水分移動現象と,それに伴い発生するひび割れの進展現象を明らかにすべく,研究を行っている.まず,水分移動現象に多大な関連性を持っているコンクリート細孔壁への水分吸脱着の影響を実験的なアプローチにより明らかにしている.本年度は,これに関連する実験を中心に行った.現在,その結果を数値解析へ反映させるべく研究を展開しており,その成果は今春,論文投稿を予定している.また,水分移動に伴うひび割れの進展解析を可能とする新たな研究については,コンクリート関連の学会論文集に投稿中であり,本年7月に出版される論文集に掲載される予定となっている.
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