研究概要 |
本研究では硬化セメントペーストで作製した小供試体によるモデル実験において,打設直後からの水分逸散挙動を検討した.水分逸散挙動は材料表面の乾燥による質量減少に基づいて評価した.本実験では,水セメント比40%,50%,60%の三種類の配合に対して,新側の打設は旧側打設後3,6,24時間後に行った.実験に際しては,先ず高さH/2の旧側となる供試体を作製し,新側を打継ぐことにより高さHの打継ぎのない供試体を作成した.逸散水率の計測は原則として24時間間隔で240時間計測することとしたが,予備実験の結果より逸散水率が顕著に変化する打設直後より24時間〜72時間においては集中的に計測を行った.実験結果より,打継ぎにより形成された組織構造を見かけ上の水セメント比として整理し,結合水率の時刻歴変化より打継ぎのある材料系の組織構造の空間分布について吟味した. 実験結果より,打継ぎのない供試体に対する打継ぎのある供試体の水分逸散挙動は組織構造変化の観点からは,見かけ上の水セメント比の低下として考えられ,その低下量は新側打設直前における旧側材料の蒸発可能水率すなわち含水状態を反映しているものと推定された.また,材料系全体の見かけ上の組織構造が同様な状態となる材齢後期においても,逸散水率においては,依然として打継ぎのない供試体と打継ぎのある供試体とで差が生じていることから,打継ぎのある供試体と打継ぎのない供試体の組織構造の空間分布に相違があることが推測された.打継ぎのある材料系での見かけ上の水セメント比の低下量は,この組織構造の空間分布特性の差を表しているものと考えられる.
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