研究概要 |
本研究の目的は,音響異方性を有する鋼板の板厚方向の音速分布を調べること,および,音響異方性を有する鋼板に対し超音波探傷試験を適用した際に,異方性がどのように試験結果に影響を与えるか,どのような方法で試験結果をキャリブレーションするかを検討することである.音速計測により,音速は板厚方向に変化するといった結果が得られた.音速は板表面近傍で速くなり,板厚中心部では表面近傍よりも遅いことがわかった.また,鋼板の圧延方向に平行な方向に沿った音速のほうが,圧延直角方向に沿った音速よりも,板厚方向の音速に違いが大きく現れることがわかった.鋼板のマクロ組織写真を撮影し,結晶の大きさや伸びを観察した.板表面近傍の組織のほうが結晶が伸び,円形というよりもだ円に近くなっていることが確認された.音響異方性を有する板に横穴を開け,超音波探傷試験を行い横穴像を表示した.音速比の大きい薄い板のほうが探傷結果に誤差が生じやすく,実際の超音波屈折角が公称の屈折角よりも大きくなる傾向がみられた.厚板のほうにおいても探傷結果に誤差を生じたものの,薄板と比較しても誤差は大きくならなかった.実際と公称屈折角との差は薄板で最大で10度にもなるのに対し,厚板では最大で8度程度であった.横穴の位置のずれを調べたが,薄板の場合,最大でずれが30mmとなったが,厚板の場合では最大でも20mmであった.今後は音速の計測に加えてキャリブレーションの方法も検討していく予定である.
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