研究概要 |
本年度は、景観設計例の図案から輪郭線を抽出し、スペクトル解析を用いて定量化する手法を提案した。まず、ある特定の視点からある特定の大きさの二次元矩形枠に投影された橋梁などの主要構造物と山やビル群などの背景のみの単純な線画から抽出される輪郭線に対して、次の二つの方法でスペクトル解析し、それぞれについてパワースペクトルを求めることにした。 ・手法a:背景と構造物とをそれぞれ1本ずつの輪郭線で表す。構造物の輪郭線をマザーウェーブレットと見なして、背景の輪郭線と畳み込み積分して得られるウェーブレット関数のパワースペクトルを求める。 ・手法b:背景は1本の輪郭線で表し、構造物を上側輪郭線,下側輪郭線,中間部輪郭線の3本の輪郭線で表す。構造物の3本の輪郭線を1本ずつマザーウェーブレットと見なして背景の輪郭線とそれぞれ畳み込み積分して得た3つのウェーブレット関数を足し合わせて合成した波形のパワースペクトルを求める。 手法a,手法bのウェーブレット関数波形の周波数分布や、背景の輪郭線と構造物の輪郭線との相似性といった「図形の特徴」を単なる数値で表すために、次のような4つの指標を提案した。1)ウェーブレット関数Wの波立ちの標準偏差を表す指標。2)Wの正負の割合を表す指標。3)Wのパワースペクトルを両対数プロットした曲線の回帰直線の傾きを表す指標。4)その回帰直線に対するパワースペクトルの標準偏差を表す指標。山またはビル群の背景に異なる橋梁を配した図案に対して、これらの指標を算出し、図案の図形的特徴が指標の数値に反映されることを確認した。
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