研究概要 |
本年度の研究では,旧Tacoma橋が何故19m/sまで耐えたのかという観点に立ち,この要因をたわみ渦励振とねじれフラッターとの空力的干渉にあると考え,一連の風洞実験を通じて,旧Tacoma橋の落橋に至った経緯を改めて検討することで,異種空力振動間の干渉作用の把握を試みた.以下に本研究で得られた結果をまとめる. ●旧Tacoma橋桁断面では以下の3つの干渉状態の存在が明らかとなった.(1)たわみ渦励振がねじれ渦励振を励起する空力干渉.(2)たわみ渦励振がねじれフラッターを抑制する空力干渉.(3)ねじれフラッターがたわみ渦励振を抑制する空力干渉. ●たわみ渦励振によるねじれ振動の励振機構として,ねじれ振動は一定振幅で定常振動している一方,たわみ渦励振が振幅を変化させながら振動し,前縁剥離渦と後縁二次渦が断面後縁部で一体化するたわみ変位下向き最大とねじれ変位頭上げ最大が一致ずる時には,たわみ渦励振の振幅が最大値を示すことで,ねじれ振動を励起するエネルギーが供給されることが考えられる. ●旧Tacoma橋桁断面では,ねじれフラッターの励振機構が低風速域と高風速域では異なっていることが考えられ,たわみ渦励振の空力干渉により抑制されるのは,断面側面を流下する渦により励振力を得る低風速ねじれフラッターであることが示唆された.一方,剥離バブル主導の高風速ねじれフラッターは逆に,たわみ渦励振を抑制すると考えられる. ●実際の旧Tacoma橋では,たわみ渦励振の干渉によって,低風速ねじれフラッターが抑制され,フラッター限界風速が大幅に引き上げられていたことが示唆された.ねじれフラッターが発生し,落橋に至ったのは,風速が上がり,たわみ渦励振の風速域を超えたため,あるいはねじれフラッターが低風速ねじれフラッターから高風速ねじれフラッターへと切り替わったためであると考えられる.
|