研究概要 |
平成13年は,従来のアレー観測法に基づいて得られた記録を使って,周波数-波数(F-K)スペクトル法や空間自己相関(SPAC)法を用いて求められる位相速度と本研究で提案する観測法(2sSPAC法;2点の同時観測を繰り返して,SPAC法を適用する手法)から得られるそれとを比較し,手法の妥当性を検討した。 観測は,広島市南部の埋め立て地で,芸予地震の際に液状化の被害が伝えられた地域を対象として行った。従来の手法との比較が行えるように,3成分4点同時観測によるアレー観測を長周期地震計を用いて実施し,精度の高い記録を得ることができた。なおこの地域では,表層のボーリングデータ,重力異常の観測データが得られており,徴動から推定された位相速度を用いて地盤の速度構造を求めた際に,その妥当性を検討することができる地域である。 さらに,得られた位相速度から推定される地盤構造の信頼性を高めるために,従来から行われているように,Rayleigh波のfundamentalモードの位相速度だけでなく,Love波のfundamentalモードの位相速度も同時に推定し,両者を同時に満足するような地盤の速度構造を推定した。 これにより,本研究で提案する手法(2sSPAC法)が,Rayleigh波だけでなくLove波の位相速度の推定についても利用できるという可能性が示された。しかし,Love波の位相速度の推定については,その結果がRayleigh波の位相速度に依存するため必ずしも安定した推定ができるとは限らず,どのような条件下で正しくLove波の位相速度が推定可能かという点については,今後の課題として残された。
|