研究概要 |
我が国における地すべりの大半は"動いたり停まったり"する再活動地すべりであり,そのすべり面では最小のせん断強度である残留強度が発揮される.このような地すべり斜面で地震や火山活動に伴う急速せん断を受けると,すべり面のせん断強度と応力状態が急激に変化して,高速流動型の地すべりが発生する可能性がある.本研究では,この現象を解明して安定性評価をするため,急速せん断を受けた土の残留強度特性をリングせん断試験により調べた.平成13年度では,まず現有のリングせん断試験装置を定圧・定体積せん断試験が兼用できるように改良し,各種機器の検定を行った.ついで,土の物理的性質が異なる4種類の粘土に対して定圧リングせん断試験を実施し,実際の地すべりの滑動速度を考慮して,せん断速度を0.002〜2.0mm/minの範囲で変化させた.各土試料の残留強度とせん断速度の関係を粘土含有量および塑性指数の観点で整理し,粘土の残留強度に及ぼすせん断速度の影響を考察した.今回得られた知見として,(1)排水条件を近似的に満たすせん断速度領域において,各土試料の残留強度は対数表示のせん断速度の増加に対して直線的に増加する.(2)せん断速度の増加に伴う残留強度の増加の度合いを表すパラメータα'を導入したところ,今回の土試料に限れば,α'の範囲は0.02〜0.06である.(3)α'と粘土含有量および塑性指数の間には直線関係が概略認められる.特に,残留強度が発現される以前のピーク強度がせん断速度の増加に対してほぼ一定であることから,すべり面の有効垂直応力は実質的に変動しておらず,供試体内部の排水条件はほぼ満足していることが分かった.したがって,せん断速度の増加によって残留強度が増加した原因として,有効垂直応力の変動よりもむしろ土の物理的性質が有力であるとの結論に達した.平成14年度には,この実験事実を定体積せん断試験により検証する.
|