本研究は、(1)研究に先立って開発した電気泳動・拡散数値計算コードを電気浸透やそのほかの土壌・地下水環境で起こりうる反応を取り込んだより汎用性の高いコードヘと改良することと、(2)改良された数値計算コードの適用性を検証するための実験データの取得、(3)実験結果と数値計算結果の比較による適用性の検討を目的としている。 本年度まず数値計算コードの改良について、電気泳動・拡散コードでは化学反応項を推定する方法に非線形最小2乗法を用いていたが、この方法では適切な解(反応項)を得られない場合があるため、遺伝的アルゴリズム(GA)や集団混合進化法(SCE-UA法)といった大域的探索手法を用いる方法を検討した。この方法は、陽イオン交換反応を考慮した数値計算コードとして作成し、従前に行われた室内カラム実験の結果と比較し、SCE-UA法が非線形最小2乗法の代替手法として用いることができる可能性が示唆された。本件で得られた知見に関しては、地下水学会誌へ投稿中である。 次に数値計算コードの検証用の実験データの取得に関しては、重金属では無いが、2価の陽イオンであるCaを模擬汚染物質と考え、これを混合した土壌をカラムに充填し、土性などの土壌特性のCaの挙動に及ぼす影響や砂質土壌に対するCaの移動特性について、流水式洗浄方式と電気化学的方式の効率の違いについて検討した。これらの実験結果は、電気化学的汚染除去法の特性を把握することと、今後開発予定の数値計算コードの検証用に用いることができる。
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