研究概要 |
砕波は波浪の静穏化を支配し,最大波力を規定する重要因子である.特に砕波によって気泡が波内部に混入する過程は,砕波機構の解明や波浪制御および海中への多量の溶存酸素供給等の面において極めて重要である,これまでに,砕波に伴う波内部への気泡混入現象については幾つかの研究が行われ,重力波前面に微少な凹凸部(微少凹凸乱れ)が形成され,この微少凹凸乱れ領域に表面張力波と推察されるくびれが発生し,くびれからの気泡連行過程が報告されている.しかし,気泡混入瞬時のくびれ・微少凹凸乱れ等の重力波に形成される形状パラメータと混入気泡との幾何的特性に関しては議論が充分ではなく,研究の余地が多く残されているのが現状である. 平成14年度は,一様勾配傾斜面上で発生する砕波現象を対象に,超高速ディジタルビデオカメラを用いた可視化水理実験を実施して,気泡混入瞬時の形状パラメータと入射波条件を幾何的に解析し,気泡の波内部への混入特性を考究した.以下に得られた結論を記す. 1.気泡混入瞬時の波面は,微少な凹凸のある領域と滑らかな水表面から構成され,気泡は微少凹凸乱れに形成されるくびれから波内部へ混入することが判明した.くびれは重力波の進行方向と逆方向に波内部に向かって生じ,くびれの内面が接することによって空気を流体内部に閉じこめる. 2.一様傾斜面上の砕波において気泡が波内部に混入する形式は大別すると4パターンであり,Pattern1〜3は,重力波の進行方向に対して気泡がそれぞれ水平方向,斜め上方向,斜め下方向に混入する場合であり,Pattern4は微小凹凸乱れ下端と乱れていない水面の境界から気泡が混入する場合である. 3.波内部への気泡混入現象は,くびれや微少凹凸乱れ等の形状パラメータによって強く支配され,微少凹凸乱れの大きさと波形勾配により気泡混入状態が異なることが確認された.
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