研究概要 |
湖沼面積650ha,平均水深0.86mと極めて浅い湖沼である千葉県北西部に位置する手賀沼は,日本一水質汚濁化が進行した湖沼として有名である.この手賀沼における富栄養化の主要因としては,流域からの過剰な汚濁物質の流入や沼内における汚濁物質の再生産,などが指摘されている.このようなことから,手賀沼における水質改善を行っていくためには,流域全体における統合的な水環境評価・管理を実施していくことが必要不可欠であり,そのためには,流域内の河川や樋管からの汚濁負荷特性や手賀沼内における物理・生態環境特性を検討し,それらの水環境を評価・予測するための数値モデリングを行うことが強く求められている.そこで本研究では,手賀沼流域における水環境システムを総合的に把握・評価するために,いくつかの多角的な現地観測や数値シミュレーションを実施することを試みた.具体的には以下のとおりである. (1)手賀沼流域における河川経由の濁質・栄養塩・有機物負荷量を把握するために,主要河川の一つである大堀川を対象として,降雨時や平常時(非降雨時)における水文・水理・水質環境に関する短期集中的な多点観測とメモリー式測器を用いた長期連続観測を行った.その結果,大堀川流域内における水質環境や汚濁負荷特性の地域差を把握すると共に,降雨時と平常時における汚濁負荷量について比較検討を行った. (2)手賀沼内における物理・生態環境に関する実態を解明するために,夏季・秋季において多点連続観測を実施した.その結果,沼内における流動特性や水温環境に関する基本的な知見を得るとともに,水質環境の実態や,浄化対策の一つである北千葉導水路の稼動状況と沼内の水質環境との関連性について検討した. (3)さらに,沼・河川内における水理現象を適切に再現可能な高精度・高効率性を有する三次元非静水圧流動モデルを構築し,実際の手賀沼内の流動状況を概ね再現することに成功した.
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