アジア地域における情報産業を主軸とした地域開発政策とそれによる国土・都市構造の変容の様子を分析し、地域の発展と共にこれまで課題とされてきた過密都市問題、環境問題などの軽減のための政策手法を検討するのが、本研究のテーマである。 平成13年度は、まず既に研究蓄積のあったマレーシアの情報産業誘導政策「マルチメディアスーパーコリドー(MSC)」を中心とした地域開発について、本年度でも文献・データレビューを加え、結果を内外に発表した。マレーシアでも、ソフトウェア等を中心とする情報産業はもともと都心に集中する傾向があり、中でもクアラルンプールや副都心プタリンジャヤにおける集積が際だって高い。しかし連邦政府が強力に押し進めるMSCプロジェクト、中でも大容量の情報通信インフラが、その利用強度が高い業態の情報関連企業の立地移転を促し、新たに郊外での立地集積を生み出しつつあるという現況がわかった。MSCプロジェクトは現在も進行中で新たにインフラが完成するなどの変化もあるので、来年度も引き続き研究を続けていく。 また、マレーシアからやや遅れて情報産業を検討しているタイについて本年度は集中的に調査を行い、来年度中に研究成果として発表する予定である。タイの場合、地域開発の焦点を情報産業に集中しすぎず、1980年代後半からの経済成長を担ってきた製造業や未だに地方で高いシェアを持つ農業・農産加工業と合わせて総合的に産業を振興する方針を採っている。ここでは、そのうち情報産業に関連する業種として、ソフト分野とハード分野に焦点をあてて、大都市バンコク周辺と地方県での振興を比較しながら調査を続けている。 さらにシンガポールについては、すでに既存研究が多く現在はその文献レビューを続けている段階であるが、来年度は政府主導の都市内情報化について多くの特色を持つシンガポールについても現地調査を含めた検討を続けていく。
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