研究概要 |
1.防災投資実績を用いた災害・事故に対する意思決定者のリスク評価特性計測の定式化 意思決定者は通常の災害の生起頻度と被害額の積で表される期待被害額によりリスクを評価するのではなく,リスク評価特性を介した主観的な災害の生起確率と被害額の積で表される認知期待被害額によって,防災施設整備水準を決定するものと仮定し,外部から観測可能な,通常の機械的に算出される各災害の生起頻度・被害額と,意思決定の結果である防災投資実績から,各意思決定者の生起頻度・被害額に関するリスク評価関数を求めることとした. 2.各種の災害・事故リスクに対する防災投資の実績による意思決定者のリスク評価特性の具体的な計測[1] (1)都市高速道路高架橋における耐震投資 道路高架橋の耐震性能決定問題を対象に,現在の道路橋示方書が指し示すところの耐震性能に内包される,地震リスクに対する道路管理者としての政府のリスク評価特性を計測した.その結果,レベル2地震発生確率が1/100のオーダーである首都高速・阪神高速においては,意思決定者の認知被害額は,機械的に計算される被害額のおよそ2, 3倍〜7, 8倍となるが,地震発生確率が1/1000のオーダーであると考えられる福岡高速においては,意思決定者の認知被害額は,機械的に計算される被害額のおよそ2, 30倍〜7, 80倍となることがわかった. (2)道路交通事故リスクに対する交通安全施設整備(交差点信号機改良) 交通事故対策投資のうち信号機改良事業の投資箇所総数の決定問題を対象に,意思決定者である各都道府県の公安委員会の,交通事故リスクに対する評価特性の計測を試みた.その結果,信号機の改良投資は,一件あたりの投資費用に対し,予想される効果(期待被害軽減額)が10倍〜100倍となり,見かけ上,各公安委員会は,自己組織の損失の軽減効果のみを考慮して投資箇所を決定していると解釈できる結果となった.
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