研究概要 |
道路投資評価においては,多岐にわたる投資効果を的確に捉える必要がある.それら効果は,国民的合意が得られる価値規範(一般には道路事業者の価値規範によって代替)による重み付けがなされ,採択の意志決定の参考とされるのが一般である.そこで用いられる価値規範については,地域による格差があるものと考えられる. そこで,本研究では,意志決定時の価値規範を明示的に扱う手法として提案されている多基準分析(MCA)を用いて,都市と中山間地域を担当する道路事業者の持っている道路投資評価に対する価値規範を定量的に表し,両者の間にある地域間格差の状況を明らかにすることを目的として研究を進めてきた. 昨年度に引き続き,関連する既往研究や事例をレビューしながら,多基準分析手法を体系的に整理し,道路事業者の事業採択基準に関する価値規範を定量的に計測できる階層化意志決定法(AHP)を基本とした手法の確立を試みた. 提案した手法を用いて,道路投資評価に関する重み付けを,愛媛県西部自治体の首長および道路管理担当者を対象としてアンケート調査(一対比較形式)により探り出した.その結果,都市地域では,都心の渋滞対応や都市再生に重点がおかれ,一方中山間地域では,ネットワークの拡張に重点がおかれる結果であった. 2カ年間の研究を通じ,道路投資評価における価値規範の地域格差について分析を行い,研究の成果として,都市地域と中山間地域の価値規範には相違があることを明らかにできた.また,それらの間にあるコンフリクトの大きさを計測する手法についても言及することができた.
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