本研究では、都市空間整備プロジェクトが環境負荷発生原因となる各種人間活動をその後どのように変化させ、結果的に環境負荷をどのように変化させるかを把握することができるモデルシステムを、地理情報システム(GIS)上に構築することを目的としている。そのため、本年度は下記について検討を行った。 1.都市空間整備プロジェクトへのLife Cycle Assessment(LCA)適用の方法論提示:環境負荷推計手法として工業製品への適用が進んでいるLCAを、都市の構成要素であるインフラ施設や建築物に導入するための考え方として、それらの存在に伴う都市への波及効果をも考慮したELCEL(拡張ライフサイクル環境負荷)概念を提示し、それに基づいた環境負荷推計手法のプロセスをまとめた。その際、環境負荷として、エネルギー・温室効果物質のほか、大気汚染物質・水質汚濁負荷・廃棄物を扱っている。さらに、Distance-to-Target法を用いて環境負荷間の重み付けを行い、各種環境問題を統合評価することを可能とした。 2.都市インフラ施設・建築物のコーホート・LCAモデル構築:さらに、都市を細分化したゾーン内のインフラ施設や建築物の種類・構造形式・建設時期のデータを用いて、各施設・建築物のLCAを行い、それらを合計して都市全体の環境負荷を算出するモデルシステムを構築した。また、そのために必要なデータを収集し、GIS上に都市活動データベースを構築した。さらに、インフラ施設・建築物の配置の変化に伴う都市内交通の予測モデルを構築し、データベースと連動するような形とすることで、交通に伴う環境負荷発生量への影響を予測できるようにした。
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