本研究では、中国の各都市における環境負荷の発生形態、対策状況、地域的特性等について、統計的に利用可能な都市環境指標を利用した都市の比較評価および類型化を最終的な研究目標としている。ここで、都市活動とそれによる環境負荷発生の相互作用のメカニズムは、都市の特性によって異なるが、時系列でみれば、類型化されたグループごとにある種の経験則が見出せると考えられる。そのため、中国の都市の発展パターンを、先進国あるいは他の途上国のパターンとを比較し、中国の都市がどのような発展過程にあてはまるかを比較考察することが重要となる。都市の環境指標としては多くの項目があるが、今年度は、中国の都市における物質収支構造について分析した。具体的には、以下の3つの内容について分析を行った。 1.中国における都市構造物整備のためのマテリアルストックとフローとの関係 都市の発展に伴う建築物及び都市インフラの整備、資源消費の関係について明らかにするために、中国、日本、韓国、欧米諸国の都市データを用いて、建設資材消費量の推移状況や、都市構造物のマテリアルフロー指標(都市構造物の新規着工面積等)とマテリアルストック指標(述べ床面積等)の関係性、ストック指標と経済指標との関係性等について比較分析を行った。 2.中国の大都市における物質投入の要因分析 中国及び日本の大都市(北京市、上海市、東京都、横浜市、福岡市、北九州市)を対象として都市の物質収支を定量的に把握し、産業連関分析の手法を用いることで物質投入の要因について分析を行った。 3.中国の都市における廃棄物処理需要予測 中国の都市における廃棄物の発生量について将来予測を行うとともに、将来の廃棄物処理施設(焼却処理施設、埋立処分場)の整備戦略について考察を行った。ただし、ここでの分析は主に家庭系からの生活廃棄物を対象としており、産業廃棄物は対象としていない。今後は事業系廃棄物、産業廃棄物を対象とした分析が必要である。
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