中国の都市拡大の現状について整理し、都市化をもたらした要因を多変量解析により抽出した。具体的には、都市の拡大要因として、(1)移動の不可能な生産要素の存在(例えば炭鉱の近くの都市への石炭関連産業の集中)、(2)公共財の存在により良質なサービスを受けられる都市(例えば交通施設、通信施設、下水道、中央政府や地方政府の存在)、(3)生産における空間的な規模の経済、集積の経済が働いた都市、(4)経済的優遇政策を受けた都市(例えば経済特別区指定を受けた都市)などを取り上げた。さらに、これらの指標によって特徴付けられる都市ごとに、都市の空間的拡大特性に基づく都市の類型化を行った。都市拡大に影響を及ぼした要因として、規模の大きな企業の存在、都市の人口集積による労働供給能力の増加、経済的優遇措置、既成市街地の大きさが選択された。一方で、炭鉱などの資源埋蔵地の存在は、ある程度規模の大きな都市における市街地の拡大に対して負の影響を与えている可能性があることを指摘した。 次に、中国の都市の経済成長に対し、どのような要因が影響したかを分析した。ここでは、成長会計分析の手法を利用し、都市の経済成長を資本ストックや労働力の量的な変化によるものと、技術進歩や効率性の向上などを含む全要素生産性(TFP : Total Fact or Productivity)の変化によるものとに分解し、これにより成長要因を明らかにすることを試みた。これらの要因と市街地拡大との相関関係を分析したところ、都市のTFPの増加が市街地拡大を抑制していることがわかった。
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