本研究は、1)都市熱環境とエネルギー消費の空間的な関連分析に必要なデータの集約・集積、2)都市域全体についての数値情報と建築モデルによる時間・空間的な空調エネルギー負荷計算結果の精度向上、3)高解像度衛星画像による街区規模の熱環境構造を詳細に考慮した分析を目指すものである。 第一段階として、熊本市を解析対象とした都市熱環境とエネルギー消費及び住民意識に関する調査を実施した。熱環境は都市域の地点ごとに違いが生じるため、生活者の意識や行動も影響を受け、エネルギー消費にも違いが生じる。この調査では、都市内の数箇所の地点を選び、基本的な情報(回答者属性、住居等)、環境への意識・行動(エネルギー消費に関連する重要な因子)、エネルギー消費、空調機器使用状況、夏と冬の快適さ、周辺環境について質問した。この調査によって、都市域の熱環境とエネルギー消費の空間的な関連について、またデータベース構築のための基礎的知見を得た。 第二として、データベース構築を目指し、これまで実施した解析を基礎として、(1)都市熱環境の決定要因、解析手法、情報、評価指標の関係を整理、(2)代表的な検討事項とその内容、各種情報、データベースについて整理・考察した。 第三として、データベース構築を具体化するために、福岡市の中心市街地の高解像度衛星画像を入手し、土地被覆解析を実施した。この結果を用いて、重回帰分析により、LANDSAT衛星による輝度温度情報と関係付けた解析を行った。この結果、都市熱環境とエネルギー消費関連分析のためのデータベース構築に関して基礎的な知見を得ることができた。一方、今回使用した高分解能衛星画像から被覆データベースを構築する上での課題も明確になった。今後の方向性としては、高分解能衛星による詳細な土地被覆データベースを基にした熱収支モデル等の物理モデルを導入した検討が考えられる。
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