研究概要 |
本年度は,RC造柱部材のせん断実験を行なって部材内部の破壊状況を観察し,曲げ降伏後のせん断破壊の発生原因とその過程について調査した。同時に,既往の実験的研究のデータを参考にして,繰返しによる剛性低下及び曲げ降伏後の耐力劣化を考慮した復元力特性モデルを開発した。 RC造柱部材のせん断実験 曲げ破壊後にせん断破壊を生じるような,比較的せん断余裕率の小さい試験体を5体作成し,低軸力下で1)単調載荷,2)正負繰返し載荷,3)片側繰返し載荷,の3通りの載荷実験を行なった。これらの載荷方法では,1)3)2)の順に耐力低下が起こりにくいことが予測されたが、実験結果では1)2)3)の順となった。部材内部の破壊状況を観察した結果、片側繰返し載荷では部材内部のコンクリートに3次元的な歪みが発生する以前に、横補強筋が降伏-破断していることがわかった。すなわち、全く同様の断面を持つ部材でも,載荷履歴によって異なる破壊モードとなり,一見損傷が蓄積しにくいような履歴でも脆性的な破壊が生じることがあり得る。 既往の実験的研究に基づく復元力特性モデルの開発 過去の検討で,RC部材が大きな繰返し変形を受けると,単調載荷時に比べて小さな変形で耐力低下が発生することがわかった。剛性低下を適切に考慮すれば,ある程度この効果を表現することができるが,非常に大きな変形を受ける場合には不十分である。そこで,変形が進行した際に耐力低下開始点が移動するモデルを開発した。既往の実験的研究で得られた荷重-変形関係の再現した。多数の大変形繰返しまで追跡できる適用範囲の広いモデルである。実験で観察されたような複雑な状況をも鑑みて,より物理的に明確なパラメータの設定方法を策定することが今後の課題である。
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