観測された固有振動数と固有振動モードに含まれる不確定性が推定値に及ぼす影響を評価した。この評価には、数値モデルにより作成したデータと、オークランド市庁舎の実構造物観測データを用いた。不確定を表現するために、モンテカルロシミュレーションを用いた。固有振動モードよりも固有振動数の方が精度良く観測できるので、通常不確定性が低い。それにもかかわらず、固有振動数の不確定性の方が推定値に大きな影響を及ぼす可能性があることを本研究で指摘した。この成果を2001年度建築学会大会(東京)において発表した。 有限要素法を用いて離散化された構造物の損傷推定手法を開発中であり、以下にのべる問題点について現在も研究を遂行中である。(1)観測データの個数が推定すべきパラメタの数よりも少ない。(2)観測値および数値モデルに不確定性がある。(3)解析時間の高速化。(1)の問題については、推定すべきパラメタの数を適切に低減することにより、複数の損傷個所を持つ場合にも適用できる損傷推定手法の枠組みが、完成しつつある。数値実験を通じて既往の手法と比較することにより、損傷推定精度の確認を現在行っている。また、(2)の問題については、モンテカルロシミュレーションと、感度を用いた手法の組み合わせにより、精度良くかつ効率もよい不確定性の評価手法を開発中である。(3)の項目については、並列化の可能性を含め、最新の計算機環境に適用しやすいアルゴリズムを開発し、京都大学大型計算機センターの並列計算環境を用いて数値実験を行っている。
|