最も身近な大型木造建築のひとつに学校校舎建築が挙げられる。しかし、都市部を中心にRC造校舎への建替が進み、木造校舎を見ることが非常に少なくなった。また、郊外の過疎化の進む地域では、生徒数の減少により、休・廃校に追い込まれる学校も少なくなく、木造校舎がいまだ使用可能な状態にも関わらず取り壊されたり、管理が行き届かないために廃墟となり朽ち果ててしまう例も見られる。 そこで本研究では、古い木造校舎を取り壊しの危機から救うことを目標とし、大分県内に建つ木造校舎83棟すべてに出向き、その現状、使用状況など調査をおこなった。これによると大分県内では県西部とくに古くから林業の盛んな日田玖珠地域多くの木造校舎が残っていること、一方で県都大分市には木造校舎が一棟も現存しないことがわかった。また、.現存する木造校舎のうち、およそ半分が現在も学校として使用中であり、残りの半分がすでに廃校または休校であった。このうち、他の用途への再利用が行われているのは1/3で、その他の校舎は取り壊しに危機にあることがわかった。これらの校舎はそのほとんどが昭和20年〜40年の間に建てられたもので、補修・補強を行えば今後も使用可能であると思われるものが大半であった。そこで、その中から取り壊しの危機に瀕している2棟ついて詳細調査を行い、現行の建築基準法の壁量規定への適合性のチェック、「木造住宅の精密耐震診断」による耐震診断を行い、耐震性の評価を行った。これにより、壁量による診断では、現行法を完全には満たさないものの大断面筋違の使用や比較的多くの壁量が配置されているなど、比較的容易な補強で現行法を満足することがわかった。精密耐震診断による評価では、特に地盤・基礎、老朽度の点で低い評点が発生したため、かなり危険な評価となった。 今後は、木造校舎の耐震性評価方法の再検討、耐震補強案の提案、検証実験などを実施す予定である。
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