近年の少子化や過疎化の進行による小中学校の統廃合・廃校により、貴重な大型木造建築である木造校舎がまだ使用できる状態にもかかわらず、次々に取り壊されてきており、現在も多くの木造校舎がその危機に瀕している。その理由として、耐震性の不備と補強・補修の費用が高額であることなどを挙げる自治体が多い。 そこで本研究では、昨年度に引き続き、大分市近郊の山間地域にあり、地域交流施設の一部としての利活用が検討されている木造校舎について、詳細な調査を実施し、その老朽度・耐震性などについて詳細な検討を行うとともに、補強方法についての提案を行った。 また一方で、昨年度からの本研究で明らかとなった古い木造校舎特有の構造である「接合部が釘止めのみの大断面筋違を持つ耐力壁」と「大断面梁、束ね柱、方杖から構成される柱-梁接合部」について、実際に使用されている寸法、接合を再現した試験体を製作し、その耐震性能を確認する実験を行った。これにより「大断面筋違を持つ耐力壁」は、現在の建築基準法に定められている断面寸法による壁倍率に比べ極端に小さい壁倍率しか発揮できず、現状では危険である可能性が明らかとなった。しかし、その後行った同耐力壁の補強方法を検討する実験により、研究代表者らが開発した接合法を補強に応用することで、比較的簡単な施工で現在の基準と同等の耐震性能まで補強することができることが明らかとなった。また、「柱一梁接合部」の実験により、この接合部は最大耐力は比較的大きいものの、初期剛性が低く、これによりラーメン構造と考えた場合の水平耐力が低くなることが明らかとなった。 このように本研究の調査により、現存する木造校舎の実態とその特徴が把握できたとともに、実験により、その性能も定量的に確認し、補強方法とその効果についても確認提案を行った。今後も研究を進め、補強の必要な木造校舎それぞれについて、現実的な補強方法などを提案していきたいと考えている。
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