我国のエネルギー供給・消費構造では、その供給エネルギーの約65%が損失しており、これが都市のヒートアイランド現象に対する一要因となっている。特に夏期においては、建物からの冷房排熱の大気放出によって都市周囲気温が上昇し、更に冷房廃熱増加させるという悪循環を引き起こし、これが電力消費増大要因となっている。よって、持続可能な社会システムの構築には、都市廃熱の有効利用が重要であると言える。そこで本研究では、この問題に対する一方策として、廃熱回収による長期蓄熱型地域熱供給システムを提案し、その適用可能性と計画手法に関して明らかにすることを目的とした。 本年度は、上記検討を行うにあたり、先ずは検討対象地域の絞り込みと、その地域の熱負荷に関する吟味を行った。選定した対象地域は、関東地域に所在する商業施設を近隣に持った集合住宅団地であり、この熱負荷について建物熱負荷シミュレーションプログラムを用いて算定した。この結果より、商業施設の熱負荷は年間を通じて冷房起因の温廃熱が多く排出され、集合住宅地域は、年間を通じて温熱需要がかなり高いために、商業施設の温排熱を住宅の給湯・暖房に活用できることを確認した。 上記結果を基に、商業建物区とその周囲の集合住宅区の廃熱トレードによる長期蓄熱型地域供給システムの具体システムを検討した。システムは、廃熱回収を行うためヒートポンプ熱源と水蓄熱槽を基本とするものである。本研究では、このシステム構成要素の容量設計と、年間エネルギー消費量解析のためのシステムシミュレーションプログラムを作成した。この計算タイムステップは、システム制御動作とエネルギー消費計算に関しては時間単位、地下に建設される蓄熱槽周りは秒単位としている。 開発プログラムを用い、提案システムの年間エネルギーシミュレーションを行い、従来型システムと比較することで、システム適用可能性に関する一考察を行った。
|