研究概要 |
本研究は,動的熱負荷計算プログラムに容易に組み込めるような形で,熱橋を含む壁体の計算を行う方法を開発することを目的とする.定常計算に限っていえば,熱橋の近似方法はかなり提案されているため,まず既往研究についで調査した.簡易な定常計算法として確立されたものとして,線熱橋・点熱橋の考え方を用いるISO 14683の方法や平均熱貫流率を求めてから熱橋タイプごとに決めた熱橋係数を乗じる日本の住宅省エネルギー基準解説書の方法がある.更に簡易なものとしては,熱貫流抵抗の上限値と下限値の単純平均の逆数とするISO 6946の方法もある.動的熱負荷計算では面積を有しない線熱橋や点熱橋は室内の相互放射などの扱いがしにくく適用が困難である.今回開発したのは,熱橋を含む部位を一般部と熱橋部の2つの1次元的に熱流が生じる壁体に置き換え,熱応答が最大となる位置の値を熱橋部の熱応答とし,熱貫流率が合うように熱橋部面積を調整するという方法である.単純に壁体が増えるだけなので既存のプログラムへの組み込みにはほとんど支障が無い.このような扱いをすれば,結露判定で必要となる最低壁面温度と壁体を通過する熱流量を両方とも近似することができる.しかし,本来熱橋面積は周波数によって変わるため,一定値としたときの誤差が懸念された.そこで,いくつかの熱橋を例にとり,差分法による精解と近似解をラプラス変換領域で比較検討した.その結果,問題なく近似できる見通しを得た.今後の課題としては,熱橋部の応答特性を再現できるような仮想的な壁体の構成法の開発があげられる.
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