研究概要 |
本年度は,日本の委任統治時代の南洋群島における建築活動の実態の歴史的変遷を明らかにすることを目的として,具体的には以下のように研究を進めた。 1)南洋群島において建築活動に関わっていた日本人について 当時の職員録や日本建築学会会員名簿などを用いて,当時,南洋群島において建築活動に関わっていた日本人技術者を明らかにし,南洋庁における建築組織の変遷の概要を明らかにした。その結果,南洋群島に関係する建築技術者18名の経歴を整理できた。また,南洋庁では,建築活動を管轄していた部署が,財務部土木課,庶務課,土木課,内務部土木課,交通部土木課,交通課のように変遷したことが推測された。 実際に施工を行っていた請負業者や個々人の活動や業績については,未だ明らかになっておらず,今後の課題である。 2)南洋群島において日本人により建設された建築物について 研究計画では,主として国内で資料を収集し,当時の建築活動に関わっていた日本人が建設した建築物を整理することを目指していた。しかし,国内における資料が稀少であるため,またその他の事情が許したので,現地調査を行った。その結果,サイパン,パラオ,ヤップ,トラック,ポナペ,テニアン,ロタなどで官舎や小学校校舎などの公共建築物が残存していることが確認された。 また,現地調査の結果やこれまでに収集した資料をもとに,当時の建築物の床下の構造について検討し,日本国内よりも床下の高さが高かったと推測できた。 今後は,更に詳細な現地調査を行い,実測などにより残存している建築物の平面図や立面図を作成するとともに,国内の資料収集も鋭意継続する予定である。
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