本研究では、拡張アメダスデータを利用した詳細な気象データと積雪面の熱収支解析をもとに、全国の自然融雪エネルギーの賦存量マップを作成し、その地域で利用可能な自然融雪エネルギーの種類と量を示し、最適な自然エネルギー利用型の融雪方式を検討するための基礎資料と得ることを目的としている。まず本年度は、自然融雪エネルギーを予測する熱収支モデルのプロトタイプを構築することを中心として作業を行った。そして、ここで開発した熱収支モデルを用いて基本的な条件を対象とした数値計算を実施し、各自然要素(日射、風速、気温、湿度)の感度解析などを実施した。また冬季には、新潟工科大学グラウンド及び新潟県長岡市の市街地を対象とした実測調査を行った。この調査では、積雪量・融雪量分布の他にその時の各種気象条件を測定した。これらの物理量については、熱収支モデルを検証するための基礎データとして使用した。さらに拡張アメダスデータを熱収支プログラムに読み込むためのインターフェース部分も実施し、日本の5つの都市を対象とし、融雪エネルギーの分布を算出し比較した。その結果、以下のことが明らかになった。1)日射量だけではなく、気温や風速、湿度といった他の気象要素も融雪に比較的大きな影響を与える。2)実測により得られた融雪量の、数値解析による再現を試みた結果、融雪量の日変化に関して、ほぼ対応する結果が得られ、本研究で用いた熱収支モデルは概ね妥当なものである。3)積雪面上での熱収支は地域毎に様々な違いが見られた。これらを詳細に検討する事は、地域の自然エネルギーを利用した融雪システムを構築するのに有効である。
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