研究概要 |
本研究の主たる調査対象グループホームは,研究代表者が設計したもので、3ユニットからなる痴呆性高齢者グループホームである。当該グループホームは,ユニット館の関係を重視し、積極的に敷地内外の外部空間を活用できるように計画されている。現在,当該調査対象の入居者の行動を各回48時間連続で観察し,過去の調査結果と照らし合わせながら,行動変化の各館比較や時系列比較を行うことで,効果的な複数ユニットの物理的環境のあり方と入居者のQOLの向上について検討を行っているところである。 現在までの調査結果から以下のような知見が得られつつある。(1)グループホームのスモール・デメリットに対し,周辺地域を含む外部空間の積極的利用と屋外空間の自発的な利用の可能性を持たせることが入居者のQOLの維持・向上に役立つ。(2)ユニット間の近隣関係を形成できるように設計された複数ユニットグループホームは,擬似的な地域ケアを提供できる可能性がある。(3)棟間の近隣関係を拡張して地域のコミュニティーに積極的に加わること、棟間を含む地域との交流を促進することがグループホームにとって重要である。(4)立地や建築など安全で交流しやすい物理的環境は,入居者の生活に広がりをもたせる可能性を持つ。 今後、グループホームは数の時代から質の時代へと転換することは間違いない。ユニット化された特養や老健などの大規模施設をはじめとして、介護サービス付の高齢者住宅等、様々な住環境との競合の時代となる。これら施設がその中で生き残るためには、住環境・介護といったハード・ソフトの両面から入居者のQOLを担保する必要がある。本年3月末には,研究代表者が設計した新たな2ユニット・グループホームが札幌市内に竣工する。これは,本研究の主たる調査対象であったグループホームと同様のコンセプトを持つが、その建築形態は大きく異なる。次年度は,これら二つの複数ユニット・グループホームの調査の比較検討を中心に行う予定である。
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