タイの都市住宅の多様性や農村住居の地域性については明らかになりつつあるが、そうした住宅において共通してみられる住空間がある。それは、食事やくつろぎ、来客のもてなしや功徳を積むため僧侶を招いたり、予備寝室などとして多目的に使われ、住居に住む人と地域の人をつなぐ、住居の内と外の接点ともなるべき居間的空間(一部地域ではテラス形式)である。本研究では、テラス・居間的空間の地域性に着目して住居内外をつなぐテラス・居間的空間の機能と役割を明らかにし、タイ住居の空間構成の特徴および住戸計画のあり方について考察することを目的とする。 今年度は文献調査をふまえ、現地研究者の協力を得て現地調査を実施した。伝統的住居の空間構成を反映して設計された集合住宅において、テラス・居間的空間を複数の住戸で利用する場合の特徴について機能および物理的側面から明らかにした。その結果、中部地域の伝統的住居の特徴的空間の一つであるテラス空間は、高密度な都市型集合住宅の計画を考える上において非常に興味深い空間であり、その利用方法についてもタイでの生活様式に適合しているものであり、住戸計画を考える上でのひとつの重要な空間であることが分かった。 しかし、これらの空間を地域性という点からどのように解釈し、捉えることができるかという課題について、さらには今後の住戸計画のあり方についての具体的な提言については、今後も継続して調査・考察過程で明らかにしていきたい。
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