本研究は、高密度居住区モデルの開発を前提とし、そこにおける環境デザインの手法を探究するものである。具体的には、建物が密集した街区を対象として、街区内の空隙の配置システムについて調査と分析を行い、この結果に基づいて、高密度居住区モデルにおける空隙の配置システムを検討することを目的とするもので、今年度の実施内容は以下の通りである 1.予備的調査 (1)建物密集街区に関する資料調査:建物密集街区を建物容積率の大きい街区と捉え、国の内外を問わず、空隙の配置という観点から様々なタイプの建物密集街区について、資料調査を行った。 (2)分析対象街区の選定:上記のデータを参考に、空隙の形態や配置が特徴的な街区という観点から、東京の鐘ヶ淵とベトナム・ハノイの旧市街地を分析対象街区として選定した。 2.現地調査と空隙データベースの作成 (1)現地調査:ベトナム・ハノイの旧市街地について、主に街区内の空隙の形態と配置、住居の平面構成についての実測調査を行った。 (2)空隙データベースの作成:東京については、既に東京都都市計画地理情報システムのデータを利用して、空隙のデータベースを整備した。ハノイ旧市街地については、既に一街区を選定し、100軒程度の建物の3次元形状に関する実測調査を終えているが、この実測結果と今回の調査に基づいて、空隙データベースを作成した。 3.空隙の評価手法の考案と適用 (1)手法の考案:作成されたデータベースを用いて、建物密集街区における空隙配置システムを分析するための手法を考案した。空隙を定量的に評価する手法については、これまでの研究成果を参考にしている。 (2)手法の適用:考案された分析手法に従い、効率的な計算プログラムを作成し、各対象街区の空隙データベースに適用した。 (3)各街区の空隙配置システムに関する考察:上記の結果から、各街区における空隙配置システムの特性を明らかにし、その成立要因として必要不可欠な事柄を考察した。
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