研究概要 |
本年度は以下の作業を行った. (1)阪神淡路大震災における復興期の政策課題の理解と自治体における復興計画の課題の抽出 研究の準備段階として既存の研究蓄積に加えて(1)仮設住宅供給のあり方,(2)恒久住宅供給のあり方,(3)復興まちづくりのあり方,(4)自力再建に対する支援のあり方,の4つの観点から阪神淡路大震災の復興政策の整理を行った.また,震災後制定された生活再建支援法に関する議論,また最近議論が行われている住宅再建支援法案に関わる議論を整理した.また,鳥取西部地震において鳥取県が独自に行った住宅再建資金の直接助成に関しても情報整理を行った.これらの作業により,住宅再建支援方策を検討する枠組みが構築された.最適な住宅再建施策は,地域特性,被害特性,被災者の社会属性に依存するものであり,十分な検討が必要とされることが再確認された. (2)住宅再建問題に関係する諸変数の抽出 阪神淡路大震災の住宅再建問題の構造を分析し,住宅再建問題を規定する変数の抽出を行った.今回の作業は第一段階の作業と位置づけ,今後の研究の進捗にあわせ,細分化,或いは,統合する予定である.また,海外(主としてアメリカ,トルコ,台湾)の住宅再建問題に関する文献レビュー,実際の被災者支援の実態調査を通して,海外における住宅再建問題の構造を把握した.各国の社会状況,都市の空間特性が大きくことなるため,海外の事例から直接学ぶという視点からは分析が困難であったが,日本の政策の特殊性を知る上では非常に重要な知見が得られた.日本では,阪神淡路大震災において自力再建の原則が堅持され,社会的弱者に対する福祉政策的な意味合いで住宅再建施策が講じられたが,必ずしもこの自力再建の原則は普遍性のあるののではない.また論理化されたものではないことが海外調査を通して明らかになった.今後は,さらに考察を深め,日本の住宅再建問題に深く切り込みたい.
|