研究概要 |
平成13年度は南日東住宅および北畠住宅の現地調査・文書図面調査を行い,その成果を報告書としてまとめた。本年度は引き続き,戦前に建てられた大阪市のRC造改造住宅である北日東住宅について研究を進めた。北日東住宅は建て替え事業に伴い,平成14年8月に解体されたが,本研究では解体工事直前の6月から敷地環境の変化,外観および室内の改造状況,当初設備・意匠の残存状況などについて現地調査を行った。また,こうした現状の把握と平行して建設当初の資料を収集・分析した。その成果として,以下の6点が明らかになった。 (1)北日東住宅の不良住宅地区改良事業における位置付け (2)北日東住宅の住戸計画・住棟計画の建築計画史的意味(今宮・下寺・南日東を含めた考察) (3)外観・内部デザインについて (4)近代モダニズム建築運動との関わり(建築組織・設計者) (5)建築後70年後の住戸内の改造の傾向と特徴(設備・内装・間取りほか) (6)特徴的な改造である「出し家」の形態と機能分析 昨年度の南日東住宅,北畠住宅,本年度の北日東住宅の調査・研究によって,戦前に大阪市の社会事業として建設された改良住宅および分譲住宅について建設当初のみならず,70〜80年を経た住環境を把握・分析することができた。これらの成果は,現在注目されている木造住宅およびRC造集合住宅のサスティナビリティの可能性について,多くの知見を与えるものといえる。
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