本研究は、復原や保存などにより水堀が現存する地方都市(以下、城郭都市とする)を対象とし、それらにおける地域施設や地形などによる空間構成を検討することから、その類型的なあり方を明らかにすることを目的とする。分析を始めるにあたり、城郭都市の環境構成を検討するために、資料となる計40の対象地を選定し、それらの現地調査を行った。これらの資料について、「水堀の平面形状」、「緑地の形状及び配置」、さらに庁舎や文化施設等の「施設配置」といった、地域環境の空間構成に大きな影響を与えると思われる項目に関して検討を行った結果、項目の一致した資料のうちで頻度数の高いものを、「環境構成類型」として抽出した。これらは、「幅の広い水堀がほぼ完全な形で残り、その周辺に施設が分散して配置された構成」および「幅の広い水堀が断片的に残り、その周辺に施設が分散して配置された構成」である。 さらに、上記の成果を踏まえ、地方都市の中心部における環境構成の新たなあり方を、建築設計のプロジェクトとして提案した。対象地として、上記の検討項目に構成的な特徴のみられた5地域を選定した。例えば、篠山(兵庫県篠山市)では、水堀の平面形状がロの字型のほぼ完全な形で残されているが、このことが周辺の環境整備を進めるうえで拘束力として働いており、都市空間に強い閉鎖性を生み出している。そこで、同地におけるプロジェクトでは、こうした水堀の形状を維持しつつ、ロの字型の平面を4つに分節して捉え、それぞれの部分を、散策路、スポーツ・パーク、野外シアターを含むイベント・パーク、花畑といった、水との関係をもつ公開領域として新たに構想した。このように、城郭都市における中心部を、緑地、植栽、などの自然に関する要素、また建築物、抱壁、橋などの人工的な要素を用いて、水堀を中心としたひとつの混成的環境として捉える空間構成のシステムを提案した。
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