研究概要 |
本研究ではプラズマ・ガス中凝縮法によりCo-Pd,Co-Cr合金クラスター集合体を作製し、その結晶構造、組成分布、磁気特性について研究を行った。プラズマ・ガス凝縮法クラスター源は、スパッタリング法とガス中凝縮法を組み合わせ、直径3〜20nm程度の金属・半導体クラスターを作成する装置であり、原料ターゲットを気化するスパッタ室では、約1〜3Torrと通常より1〜2桁程度高い圧力領域においてスパッタを行う。クラスターの核生成、成長はターゲットとノズル間の成長領域で行われ、その間隔を調整することによりクラスターのサイズ制御が可能である。 本研究の第1段階として、このプラズマ・ガス凝縮法クラスター源を用いて合金クラスターの作製を試み、その結晶構造、組成の分布状態を調べた。電子線回折によるとCo-Pd合金クラスターの格子定数はベガード則に従っており、合金クラスターを形成しているものと考えられる。一方、非固溶系Ag-Nb合金クラスターのナノビームEDXによると、各クラスターの組成は平均組成から大きくずれており、AgならびにNbリッチ側に分離する傾向を示した。同溶型Co-Pd合金系と比べて、正の混合エンタルピーを有する非固溶型Ag-Nb合金系では、クラスター成長段階において少数側の異種原子が再蒸発することにより全エネルギーが低くなるため、各クラスターの化学組成が2極分離したことを示唆している。 次に、Co-Cr(Cr=0,10,20,30at.%)の結晶構造を電子回折により調べた。その結果Cr=0,10,20at%ではfcc構造が、Cr=30at%ではhcp構造が観察された。磁気光学効果の測定ではカー回転角はCr量の増加に伴い単調に減少し、カー楕円率はCrの増加に伴い正の方向に分散する傾向を示した。この原因については現在研究継続中である。
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