人工格子多層膜やナノコンポジット永久磁石などが次世代磁性材料として台頭している。新しい磁気特性発現を設計する際、各磁性元素間にはたらく磁気相互作用は必要不可欠な情報である。しかし、従来の実験技術では、各強磁性層の磁気ヒステリシスを独立に得ることは極めて困難であった。本研究では元素選択的に磁気特性を測定する新しい手法として、X線MCD(Magnetic Circular Dichroism)による元素選択的磁化(ESM : Element Specific Magnetization)測定をより高度かつ標準的な手段に発展させ、多層膜をはじめとした応用磁性材料の磁気特性解析に広範に応用していくことが目的である。 本年度は、予備実験として行ったNd-Tb-Fe-B系永久磁石薄膜のESM測定を行い、その結果について解析を行った結果、スペリ磁性の証拠となる磁化曲線を得た。この結果について、論文「Element-Specific Magnetic Hysteresis in (Nd0.86Tb0.14)19Fe69B12 Thin Film by X-ray Magnetic Circular Dichroism」の投稿を予定している。また、SPring-8における平成14年度前期課題として、「XMCDによる元素選択的磁化測定を用いた希土類合金のNon-Collinear磁気構造解析」が採択され、来年度は5月に実験が予定されている。ここでは、DyCo5単結晶で見られるスピン再配列について調査する。研究は計画に沿って順調に進行している。
|