研究概要 |
本研究ではPbNi_<1/3>Nb_<2/3>O_3(PNN)およびBaNi_<1/3>X_<2/3>O_3(BNX)(X=Nb, Ta)というBサイトに磁気モーメントを有するNi^<2+>イオンを持つペロフスカイト構造の物質に着目し、Ni^<2+>-O-Ni^<2+>結合間に働く180°超交換相互作用がおよぶ範囲を調べることにより短距離的な秩序状態を調べることを目的とした。PNNの合成は原料としてNi(COO)_2,Nb_2O_5,を使用し、大過剰のPbOと混合、焼成の後、未反応のPbOは酢酸で溶出した。また、B-サイトイオンの秩序化を進行させるための熱処理は試料をPbOでくるみ、全体を白金箔で包んで鉛の飛散を防ぎながら行った。このようにして熱処理した試料のラマン散乱測定を行った結果、400cm^<-1>付近のピークが1100℃までは熱処理温度を上げるにつれて増大すること、1150℃での熱処理でそのピークがほとんど消失することがわかった。このことは1100〜1150℃の間にB-サイトイオンの秩序-無秩序の相転移があることを意味していると思われる。なお、TEMによる電子回折では超構造に由来するスポットは観測できなかった。そこで、秩序化率を上げるためLaを添加した、PbxLa^<(1-x)>Ni_<(1+x)/3>Nb_<(2-x)/3>O_3を合成したところ、粉末X線回折においても超構造に由来するピークが確認された。現在、リートベルト解析、ラマン散乱測定、磁化率測定を実施、解析中である。 BNXは原料としてBaCO_3,NiO, Nb_2O_5,Ta_2O_5を使用して合成した。ラマン散乱測定の結果、BaNi_<1/3>Ta_<2/3>O_3では熱処理温度や処理時間とラマン散乱ピーク強度との間に相関が見られたが、BaNi_<1/3>Ta_<2/3>O_3では明確な相関が見られなかった。熱処理中に分解したこともあったことから、格子が不安定なためと思われる。
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