本研究では、高分子中への金の拡散現象に関する研究である。高分子上に金を蒸着し、さらに蒸着面を高分子ではさんだサンドイッチ状の試料において、これを熱処理すると金微粒子が高分子中に拡散する。この現象について、その条件を調べ金微粒子の拡散機構を解明することを目的としている。 まず、金の蒸着量と拡散しやすさとの関係について調べたところ、高分子上が金蒸着膜で覆われてしまった状態ではほとんど拡散は起きず、直径数nm程度の金微粒子が高分子上に均一に分散するように蒸着したものでは拡散することが分かった。金属間相互作用は、高分子-金属間相互作用に比べて遥かに大きく、一旦凝集した金属を引き離すことは容易ではない。また、たとえ熱処理前に金が薄膜状になっていない場合であっても、微粒子間距離が近い場合には熱処理によって容易に凝集が生じ、拡散しにくくなる。したがって、熱処理前には金微粒子がある程度の距離を保って離れた状態にあることが必要である。 次に、高分子側の条件(分子量、化学構造など)を変えた場合の影響について調べた。その結果、金微粒子の拡散には高分子の自己拡散が大きいこと、また金と高分子間にある程度の相互作用が働いている必要があることなどが明らかとなった。また、この相互作用が小さいと金微粒子は互いに凝集しサイズが大きくなり、その結果微粒子の拡散距離は短くなる。相互作用が大きい場合の拡散に対する効果については現在検討中であるが、高分子が金微粒子どうしの凝集を妨げ、これによって遠くまで拡散することが可能になっているものと考えられる。
|