本研究は自己支持性超薄膜の簡便で精度の高い作製法の確立、およびその作製法を用いてのナノレベルでの3次元パターンを膜内に持つ自己支持性超薄膜の作製と評価、を目的としている。 本年度は始めに要素技術となる自己支持性超薄膜の作製法を幅広く検討した。その結果、マイカなど負電荷を持つ基板に対してポリエチレンイミンを高分子下地層として吸着させ、その上に目的のポリアクリル酸/酸化チタン複合超薄膜を交互的な表面ゾル-ゲル法により作製し、最後に基板全体を塩溶液または界面活性剤溶液に浸漬してポリエチレンイミンを溶解することで自己支持性超薄膜を得る、という手法を開発した。またガラス基板など疎水的な基板に対してPMMAをスピンコートし、その表面に目的の超薄膜を積層し、最後に基板をアセトン等の有機溶媒に浸積してPMMAを溶解することによっても自己支持性超薄膜を得ることに成功した。また本手法の応用として、直径約10nmのシリカ粒子を膜中に組み込んだ自己支持性超薄膜の調製を試み、そのような自己支持性超薄膜も作製できることが明らかとなった。このようにして得られた自己支持性超薄膜のキャラクタリゼーションも併せて行った。超薄膜部分の積層課程は水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により追跡し、ナノレベルの厚みで逐次的な膜成分の積層が起こることが確認された。また基板上での超薄膜の形成および剥離はFT-IRスペクトルによっても確認した。更に得られた自己支持性超薄膜の形態を走査電子顕微鏡や原子間力顕微鏡により観察した。これら超薄膜の表面はナノレベルで平滑であり、膜厚は本作製条件では約50mであった。以上の結果から本研究における自己支持性超薄膜作製法の有用性が示され、膜内への3次元ナノパターン導入の実現に期待が持たれた。
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