本研究は自己支持性超薄膜の簡便で精度の高い作製法の確立、およびその作製法を用いてのナノレベルでの3次元パターンを膜内に持つ自己支持性超薄膜の作製と評価、を目的としている。 本年度はより実用的な自己支持性超薄膜の作製法について検討を行い、その結果スピンコート法を用いた自己支持性(高分子/金属酸化物)複合超薄膜の作製法を開発した。具体的には基板上に形成した高分子下地層の上にポリビニルアルコール(PVA)の超薄膜をスピンコートにより製膜し、続いてその上に金属アルコキシド溶液をスピンコートした。製膜された金属アルコキシド層の加水分解及び重縮合を行い、PVA層上に金属酸化物層を形成させた。最後に基板を溶液に浸漬して高分子下地層を溶解させ、基板から自己支持性(PVA/金属酸化物)複合超薄膜を取り外した。本手法はスピンコート法という簡便で汎用性の高い手法を用いており、PVA層及び金属酸化物層の膜厚を自在に調整することができる。実際に膜厚約十数nm〜約200nmの自己支持性超薄膜を作製した。またレジスト用高分子が製膜されたシリコンウエハーを(基板+高分子下地層)として用いることで平滑な下地層表面を得ることができ、さらに下地層の溶解も容易に行うことができた。本手法では用いた数cm四方の基板にほぼ等しい大きさの自己支持性超薄膜を再現性良く得ることができた。また金属アルコキシド溶液に低分子化合物を添加することで、金属酸化物層への分子の組み込み、あるいは分子インプリント能の付与などが可能であることがわかった。これらの成果から、本手法により3次元ナノパターンを持つ自己支持性(PVA/金属酸化物)複合超薄膜の作製も技術的に可能であると考えられる。 以上の成果は産業の基盤技術として非常に有用なものとなると期待されたため、学会等での公表の前に特許申請を行なった。その後これらの成果について高分子学会等で発表し、学術誌への投稿準備も進めている。
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