研究概要 |
平成13年度は,高強度・高導電性Cu基合金の一つとしてCu-Co-Cr合金を開発し,過飽和固溶液を時効する手法を用いて,Co-Cr粒子をCu母相内に析出させることに成功した.ソシテ,Co-Cr粒子の結晶構造および形態を透過電子顕微鏡観察により明らかにした.粒子は母相と同じfcc構造を持ち整合に析出する.粒子がナノメートル程度のときの形状は球に近く,数10ナノメートル程度に成長すると立方体状に変化することがわかった.粒子径が100ナノメートルを越えると,非整合化が始まり,これと同時に粒子形状は{111}面を界面とする八面体形状へと変化する.粒子形上がサイズに依存して変化することを,界面エネルギーと異方性を考慮した弾性エネルギーの和を最小にする平衡形状によって説明した.また,この解析により未知であったCuとCo-Crの界面エネルギーを290mj/m^2と求めることができた. Co-Cr合金は優良な磁気記録媒体の一つとしても注目されており,数ナノメートル程度で均一なサイズのCo-Cr粒子を,常磁性のCu母相内に高密度に分散させることが可能となれば,力学的,電気的特性に加えて磁気的特性(特に高い保持力)も兼ね備えた合金を創生することが可能となる.そこで,平成14年度においては,磁気的特性も視野に入れた合金開発を行い,合金組成,時効条件等を最適化するとともに,Co-Cr粒子のhcp構造への相変態の可能性を調べることにする.実験手法として透過電子顕微鏡観察に加えて磁気測定も行うことにする.
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