研究概要 |
MoSi_2は優れた耐酸化性を有し、超高温構造材料の有力候補の1つである。多結晶材が変形能を示さない要因は、{013}<331>すべりのCRSSの大きな方位依存性である。この方位依存性の傾向は、c/a軸比3を境にして反転する。この現象に着目し、MoSi2基C11b合金のc/a軸比の制御の可能性とその結晶塑性のc/a軸比による変化を調べ、得られた結果を基にc/a軸比の観点からC11_b構造を有する超高温構造材料の設計に新たな知見を見出すことを目的とした。 MoSi_2基C11_b合金のc/a軸比制御の可能性検証 MoSi_2(c/a軸比=2.45)を基に、結晶塑性が明らかなPdZr_2(c/a=3.30)と合金化することにより、MoSi_2基C11b合金のc/a軸比の制御の可能性について検討した。MoSi_2に5、25、50vol.%PdZr_2となるよう各元素を秤量しアークメルトにより合金を作製した。5、25vol.%PdZr_2ではMoSi_2相とその他複数の相から構成され、C11_b単相にはならない。一方、50vol.%PdZr_2では単相材に近い組織が得られた。単相材の組成はMo_<0.22>Pd_<0.14>Si_<0.28>Zr_<0.36>と(Mo, Pd):(Si, Zr)=1:2に近い。結晶構造はX線回折結果よりpseudo-bctを基礎とする構造と考えられ、3つのbctセルをc軸方向に積み上げたスーパーセルのc/a軸比は約2.6とMoSi2より軸比が若干増加している。以上の結果より、MoSi_2-PdZr_2擬2元系において系統的にc/a軸比を変化させることは困難であった。PdZr_2のアークメルト材では、単結晶材と異なり、[100]制限視野回折像にC11_b構造の回折斑点の中間に回折斑点が現れた。これは、PdZr_2では試料作製法により、C11_b構造の安定性が異なる。また、(001)面にて片状に剥離しやすく、c軸方向の結合が弱いことを示唆している。これらPdZr_2の構造的な性質がMoSi_2との全率固溶を困難にしていると考えられる。以上は軸比が3より大きいC11_b構造を有する材料に共通と推測され、MoSi_2との全率固溶は困難と考えられる。 超高温構造材料の設計への他のアプローチ 室温靭性、高温強度、耐酸化性等の超高温構造材料への要求を満たす材料設計という本研究の観点から、最近注目されているMo_5Si_3を代表とする5,3シリサイドとMoとの複相材料の作製及びその力学特性の検証を行った。
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