研究課題
奨励研究(A)
ガスタービンやジェットエンジンで使用されているニッケル基単結晶超合金の非破壊余寿命評価法を確立するために、高温1100℃で137MPaの引張応力下でのクリープ処理にともなう組織変化に対応する弾性定数および超音波減衰率の変化を調べることが本研究の目的である。ニッケル基単結晶超合金はγ不規則相およびγ規則相からなり、クリープ処理を施すと、これらの組織形態は立方状組織→ラフト組織→ラフト崩壊組織と変化する。現在のところ4時間クリープ処理を施した試料において走査型電子顕微鏡観察を行ったのち、弾性定数の精密測定を行った。これまでにも報告されているように、本実験での低応力・高温熱処理の条件では、引張応力に垂直な方位にラフト(板状化)組織が形成されていた。そのようなラフト組織を有する単結晶は巨視的には正方晶(板に垂直な方位をc軸とする)の対称性を有する。正方晶の独立な弾性定数テンソルは6個存在する。そこで、直方体共振法(共振スペクトルの計測および弾性定数の逆計算)と電磁超音波共鳴法(モード選択的振動励起)を用いて、整合ラフト組織を有する弾性定数を試料一つで同時に決定した。ラフト組織は、巨視的には正方晶であっても、弾性定数の異方性についてはほぼ立方晶となることが明らかとなった。このことは、音速の異方性を利用したクリープの組織評価は難しいことを意味している。また、各単相の弾性定数の測定も行い、マイクロメカニクス計算によりラフト組織の弾性定数を評価したところ、実験によって得られた弾性定数よりも数%程度小さいことが明らかとなった。これは、整合的な格子歪みによる3次の弾性定数の影響を考慮しなければならないことを示唆している。クリープが進展しラフト組織が崩壊する段階では整合歪みは小さくなることが予想されるので、音速の絶対値変化にはまだ非破壊評価の可能性がある。来年度はクリープ時間変化を詳細に調べるとともに、内部摩擦(超音波減衰率)の測定にも着目していく予定である。
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