Nbに4d遷移金属を原子濃度で3%添加した合金をアーク溶解し、NbおよびNb合金の水素圧力-組成等温線(PCT曲線)を測定した。PCT曲線の測定には、水素濃淡電池の原理を応用した新しい電気化学的な測定方法を適用した。この測定方法では、10^<-15>Paと極めて低い水素圧力から大気圧までのPCT曲線を測定することができる。 70℃におけるNbのPCT曲線を測定した結果、10^<-3>Pa付近に明瞭なプラトー領域が確認された。従来PCT曲線の測定に使用されているジーベルツ型の測定装置では、これほどまでに低い水素圧力雰囲気下における微妙な圧力変化を正確に測定することはできない。したがって、70℃におけるNbのPCT曲線を測定した報告例は無く、本研究において初めて測定に成功した。また、Nb-3at%Zr合金のPCT曲線を測定した結果、10^<-11>pa付近にプラトー領域が観察され、Zr添加によりNb水素化物は極めて安定化することが明らかとなった。Nb-3at%Mo合金のPCT曲線を測定した結果、測定した圧力範囲ではプラトー領域が観察されなかった。興味深いことに、Nb-3at%Ru合金のPCT曲線を測定した結果、10^<-6>Pa付近にプラトー領域が観察され、RuがNb水素化物を安定化するような添加効果を有することがわかった。RuはNbよりも水素化物を形成しにくい元素であり、このような元素を添加すると母金属の水素化物は不安定化することがこれまで常識とされてきた。Nbに対するRuの特異な添加効果が本研究により初めて明らかにされた。 気相反応によって完全に水素化させた試料のX線回折パターンを測定した結果、NbおよびNb-3at%Mo合金ではNbH_<0.8>の回折ピークが観察された。一方、Nb-3at%ZrおよびNb-3at%Ru合金ではNbH_<0.8>とNbH_2の2種類の水素化物の回折ピークが観察された。
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