研究概要 |
汎用DOS/Vパーソナルコンピューター(PentiumIII, 1GHzのCPU搭載)に、Microsoft Windows環境で動作するフリープログラムDV-Xα分子軌道計算プログラムをインストールした。本ソフトウエアは、汎用プログラムであるため、正しく計算されるかどうか動作確認を行った。例として添付されていた一酸化炭素CO分子に関する計算は、正しく実行され、本ハードウエア環境で十分に速い計算速度が得られていることを確認した。 次に、Ni_3Al合金の格子構造を反映した単位クラスターを提案し、その中心原子を4族元素であるTi、ZrおよびHfで置き換えた合金について分子軌道計算を行った。得られた情報は、電子密度図、有効共有結合次数、共有電子のエネルギー準位図、等である。これらを解釈すると、Ni-Al合金に4族元素を添加した場合には、それらの原子と周りのNiやAl原子との共有結合性はTi、Zr、Hfの順に強くなることがわかった。これは、酸化反応が金属元素と酸素との結合反応であることを考えると、この順序で酸化反応に対する耐性が強くなり、Ni-Al-Hf合金で最も耐酸化性が高くなると予想される。 そこで、Arアーク溶解炉を用いて、Ni-20at%Al-5at%X(X : Ti, Zr, Hf)合金を実際に作製し、熱天秤を用いて、純酸素雰囲気中、1073Kから1273Kの温度範囲において酸化増量測定を行った。しかし、24時間後の酸化増量は、第三元素の添加でNi_3Al合金に比べて10倍程度大きくなった。この予想に反した結果は、合金の構成元素同士の結合力が、耐酸化性への寄与にそれほど大きく影響しないことを示していると考えられる。したがって、電子状態を表すパラメータのうち、どれが高温耐食性に大きな影響を及ぼすかを検討するのが来年度の課題となろう。
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