研究概要 |
TiAlの電気化学的手法による室温高延性発現挙動を検討するにあたり,pH3,0.05kmol・m^<-2>S0_4^<2->の溶液中において種々の電位を印加したTiAlに環境脆化(引張)試験を行うとともに破断した試験片を昇温脱離水素ガス分析法,X線回折解析法,表面硬度測定法,走査電子顕微鏡法により分析し,環境脆化感受性と水素との関連性について検討した.その結果,得られた知見を次に示す.(1)Tiの電位-pH図上において,酸化物が安定な電位域では固溶水素の増大および水素化物の生成は認められず,表面性状の顕著な差異も認められなかった.この条件では環境脆化が認められなかったことから,水素の侵入が容易に生じるとされている酸性溶液中においても材料表面に生成する酸化皮膜が水素の侵入を抑制することが示唆される.(2)イオンが安定な電位領域では固溶水素量の顕著な増大は認められなかったが,水素化物の形成は非常に顕著であった.試験前に大気中で形成した酸化物皮膜が連続的なひずみの付与により水溶液中で破壊された場合,皮膜破壊部での皮膜の修復が困難なことと,水素発生反応の過電圧が大きいことから,材料中への水素の侵入が容易に進行する.材料表面の水素濃度が上昇し,水素化物が容易に形成することにより環境脆化感受性が増大したと考えられる.(3)水素化物が安定な電位領域では水素発生反応の過電圧は非常に大きいが,水素化物の形成は認められなかった.このことよりこの電位領域では非常に薄く緻密な水素化物が容易に形成し,後続の水素侵入を阻止するために,水素化物が検出されなかったと考えられる.しかしながら,水素化物の形成が極微量であるにもかかわらず環境脆化感受性が(2)の場合に比べて減少したことより,固溶水素も環境脆化に大きな影響を与えることが推察される.
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