研究概要 |
本研究では,既往のCVD成膜プロセスにおいて指摘される原料供給面での問題点を改善し,種々の多成分系酸化物薄膜の作製に適用可能な新たなCVD成膜プロセスを確立することを最終的な目的とする. 従来のCVD成膜プロセス(熱CVD)では有機金属化合物を加熱・気化させることで原料ガスを供給するが,多成分系薄膜においては各構成成分毎に気化器を設置する必要があるために原料供給量の比率を意図的に調整することが困難であり,組成の制御に多くの障害が生じる.ゆえに,これに代わる新たな手法として,本研究では混合組成比を任意で調整した有機金属化合物の溶液を微細な液滴(ミスト)として噴霧し,これを原料供給源として基板上に多成分系薄膜を成膜する方法を提案する. 上記の手法によるCVD成膜を実現するため,まず本年度[平成13年度]の研究においては有機金属溶液をミスト状態で供給する原料供給系を備えたCVD成膜装置を試作した.装置の原料供給系には超音波発振式噴霧器を設置し,そこへ原料溶液[Ti(O・n-C_4H_9)_4/2-metoxyethanol溶液など]を導入・超音波噴霧することで原料を反応器系へと安定的に供給することに成功した.上述の噴霧器を用いてミスト化させた原料を成膜用基板[(100)Si等]へと吹き付けることにより従来の熱CVD装置と同様に薄膜形成が可能であることが確認されている. 今後の研究展開[平成14年度]においては,(1)十分な揮発性を有する有機金属原料が見出されていない元素系(Ba,Srなど)において安定的な原料供給を行うことができるか,および(2)原料溶液中での有機金属化合物の混合比率を調整することで多成分系薄膜の組成比を任意に制御することができるか,という点についての確認を行い,従来の熱CVDに対する本プロセス(ミスト供給CVD)の優位点を明確にする.
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