熱化学水素製造UT-3サイクルにおいて、鉄系構成反応の臭化鉄の加水分解反応とその生成物の酸化鉄の臭素化反応の繰り返し反応について、相変化を伴うサイクル反応に耐えうる反応固体の調製を目指して実験的検討を行った。熱分析装置を用いて、臭化鉄粉末の昇温中の挙動を調べ、温度と気化量との関係を明らかにし、また、実際のプロセスで用いるために調製している、固体構造の維持のためにバインダ成分を含んでいる固体反応物についても、同様に温度と気化量との関係を明らかにした。さらには、実際に水蒸気を導入して臭化鉄の加水分解反応も行って、操作条件側の検討を行い反応操作条件の見直しを行った。そして、相変化の際の気相としての損失を抑えるために、気相反応の生成物が構造維持体のバインダ成分上に留まるような反応固体材料の調製を目指して、液相アルコキシド法の導入を試みた。気相反応における生成物の散逸を防ぐためには、構造維持体であるバインダ成分の構造が大きく影響するので、固体構造の検討を行った。バインダ成分の細孔構造を、焼成時に燃焼してしまう添加物を用いることで、様々に変えた固体反応物を調製し、反応による構造変化をSEMでの観察、EPMAでの成分の分析、水銀圧入式ポロシメータを用いた細孔構造の分析などにより検討した。また、臭素化反応およぴ加水分解反応の反応性と固体構造との関係についても検討した。これらの結果から、繰り返し反応に用いることができる反応固体の調製法を提案し、10サイクルにわたる繰り返し反応の反応性の向上を確認した。
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