本研究では、化学プロセスの応答をニューラルネットワークの自己学習機能にてモデル化し、これを制御に用いると同時にコントローラの状態が異常であるかどうかを判断する仕組みをもつニューラルネットワークコントローラを提案した。 プロセス制御では、多変数プロセスの個々の操作量制御量変数間の関係を学習する小規模なネットワークを用意し、これらの出力を非線形ユニットにて結合することで得られる単一のネットワークを用いた。プロセス応答の学習では、このネットワークに制御データをバックプロパゲーション法にて学習させると、構成している操作量-制御量変数間のネットワークが自動的に適切な関係を学習し、良好な制御が可能であることがわかった。 学習により得られたプロセスモデルはプロセスの逆モデルとなっている。そこで、ネットワークを構成する個々の小規模ネットワークからそれぞれが学習している操作量-制御量変数間関係を線形近似モデルのゲイン係数として取り出し、これらの行列の逆行列を求めることで、対象プロセスの順モデルを得ることができた。 得られた順モデルからはプロセスの操作量-制御量ゲインが得られるため、そのプロセスの状態が把握できる。また、同時に、ゲイン行列の逆行列が得られない場合はコントローラがモデル化に失敗していることがわかるため、コントローラの自己診断が行える。 このコントローラを塩基+緩衝液の模擬排水を酸にて中和するpH制御プロセスに適用し、提案した手法が有効であることを確認できた。
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