微小空間に多数のセンサーを配置することが難しいと想定されるマイクロリアクタープロセスの運転操作を柔軟かつ効率よく行うために、ニューラルネットワークモデルや輸送現象方程式モデルなどの様々なモデル化手法を用いた装置内状態予測・同定システム(ソフトセンシングシステム)を検討し、また、同システムの実用化を検討するためのモデル実験を行い、以下の成果を挙げることができた。 1.選択性の高い分離が可能な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分離法を用いたマイクロ分離プロセスの運転操作性を検討するために、HPLC分離・分取操作実験および輸送現象方程式モデルによる数値シミュレーションによって得られたプロセス挙動を階層的にニューラルネットワークでモデル化し、その階層的にモジュール化されたニューラルネットモデルの分離・連結を試みたことで、装置内の状態変化に柔軟に対応しながら分離・分取挙動を予測できる効率のよいマクロ的ソフトセンシング手法を見出すことができた。 2.精密分離が可能なキャピラリー電気泳動分離法を用いたマイクロ分離プロセスの運転操作性を検討するために、ミクロンオーダーの流路幅をもつマイクロフリーフロー電気泳動装置と可視化実験用装置や吸光度測定装置を組み合わせたモデル実験システムを構築した。また同時に、数値流体解析ソフトウェアやヴィジュアリゼーション用ソフトウェア等の種々のソフトウェアを用いて、空間的不均一性を持つ化学プロセスの動的挙動を異種複数の輸送現象モデルに基づいて精密かつ効率的にシミュレーションするハイブリッドモデリング手法の開発を試み、今後のモデル実験によって得られるデータの詳細解析ならびにソフトセンシングシステムの設計における同手法適用の有効性を見出すことができた。
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