これまでに研究代表者が開発してきた分散型スケジューリング手法をベースとし、工程管理者が各現場でPDA端末を用いて手軽にスケジュールの立案・修正を行えるようなスケジューリングシステムを構築するための要素技術に関する研究を行った。具体的には以下のように、スケジューリングシステム用データ構造の設計、端末間での効率的な情報交換プロトコルとアルゴリズムの開発、PDA端末のヒューマン・マシン・インタフェースの検討を行った。 まず、バッチプロセスを対象としたスケジューリングシステムのデータ構造に関する分析・設計を行い、ISA-S88国際規格準拠のシーケンス制御系と連携可能なスケジューリングシステムを容易に導出できるようなオブジェクト指向フレームワークを提案した。こうした新しいモデリング技術を使うことにより、典型的なバッチスケジューリングシステムの構築や変更が容易となることを示した。 つぎに、各工程ごとに生産管理用のPCが配備され、各PCがLANに接続されている状況を想定し、実際に各PC間でネットワークを通じてスケジューリングに必要な情報を、デッドロックに陥ることなく、効率良く交換することのできるアルゴリズムと、そのために必要となる情報交換プロトコルを開発した。最適性、計算量、計算時間などの点について、従来の設備全体のスケジュールを集中的に作成する手法と比較し、実際にスケジューリングシステムを複数の計算機上に分散化した場合のスケジューリング性能について評価を行った。 また、PDAという限られた情報表示能力しか持たない端末を利用する場合に、どのようなデータがあればバッチスケジューリングシステムのヒューマン・マシン・インタフェースとして望ましいかについて検討を行い、インタフェース設計の指針を得た。
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